シンギュラリティ

IT

シンギュラリティとは技術的特異点と訳され、AI(人工知能)が発達していって、人間の知性を超える瞬間のことを指します。
シンギュラリティを超えると、コンピューターが自分自身を人間の知性を超えるレベルとスピードでアップデートしていくことが可能になると言われています。
更に人間のスピードとレベルを超えるアップデートが可能になり、飛躍的にAIのレベルが向上していくことになるでしょう。

巷で喧伝されている「AIが人間の仕事を奪う」という説は、このシンギュラリティ後の世界を指していると思われます。
しかしながら、私は当面シンギュラリティは訪れないと思います。
なぜなら、今のコンピューターアーキテクチャー(コンピューターの基本設計)は、発明当初と変わらぬ「ノイマン型コンピューター」であるからです。

ノイマン型のコンピューターは電圧の高低を数字の0と1に置き換えて、2進法で計算を行います。
今あなたが使っているパソコンやスマートフォンも必ずこの原則に従っています。
それを高速化することによって現在のコンピューターは飛躍的な発展を遂げているのですが、ノイマン型のアーキテクチャーであり続けるために、人間とは根本的に違った点が出てくるのです。
それは「閾値(しきいち)」の概念です。

現在のコンピューターが物事を判断するときには、ある値よりも上か下かで判断します。というかそれ以外はできません。
この時に使われる、ある値のことを閾値と言います。
テストの得点を分類するのに、80点以上はA、40点以下はDのように判断していくイメージだと分かりやすいでしょう。
これはコンピューターの得意技で、高速に正確に物事を判断していきます。

しかし、人間が感じる物事を現在のコンピューターに判断させることは容易ではありません。
空腹を例にとってみましょう。
もしコンピューターに空腹かどうかを判断させるとしたら、あらゆるデータ(血糖値や前回の食事の量や摂取した時間、基礎代謝量等々)を数値として取得して、それぞれのデータを解析した数値が閾値よりを下回るなら空腹と判断する、といったことになるでしょう。
でも、人間はそんな複雑なことはしていません。
「腹が減った」は「腹が減った」なのです。計算してどうこうではありません。

ノイマン型のコンピューターでは、このように閾値を用いた条件判断しかできません。
これを高速化、複雑化させることで擬似AIとでも呼ぶようなものを創り上げているに過ぎないのです。

一説によると、現在のコンピューターで人間の脳をシュミレートできるのは、小脳の一部の機能と言われています。
いわゆる条件反射です。
大脳皮質のシュミレートは、ノイマン型のコンピューターでは不可能であり、それを可能にするためには、アーキテクチャーの革新が数回必要になるという説もあります。
私もこの説に賛成です。
つまり、当面はコンピューターは01の条件判断の組み合わせ以上のことはできないということで、人間の知性を超える兆しはまだ見えないということです。

「コンピューターが仕事を奪う」というのは、一部正解の側面もあります。
01の条件判断の組み合わせでできてしまう仕事は、コンピューターでも代替可能という理屈が成り立つからです。
でもそこで出来ることは、自動化がせいぜいで、新しいものを生み出していくと言う点では、人間の仕事が奪われる兆しすらまだないと言えます。
量子コンピューターに代表されるような新しいアーキテクチャーの開発も進んでいますが、まだ汎用化にはいたっていません。

それでも「2030年には人間の仕事の○割がなくなる」といったことが、まことしやかに言われています。
これはITベンダーのセールストークの側面が強いのかなと感じます。
Web2.0とか、ニューエコノミーとかと同じような文脈です。
あまり過度にAIに踊らされない方がいいのかなと思います。

コメント