ユーロ

国際

ユーロの概要

ユーロはヨーロッパ25カ国(内、EU加盟国19カ国)で使われている通貨です。
本日時点のレートでは、1€=約126円です。

2002年にユーロの現金が発行され(1999年から決済用の仮想通貨として使われていました)欧州圏では広く流通することになりました。
それまでは、ヨーロッパ各国ではバラバラの通貨を使用しており(フランスはフラン、ドイツはマルク、イタリアはリラ)、統一することで、アメリカドルに次ぐ基軸通貨の実現を目指し実現に至りました。
実際に決済通貨としてのシェアはアメリカドルに次ぐ2位の地位を占めています。


もちろんこれは1993年に誕生したEU(欧州連合)の動きと強く連動しています。
ヨーロッパを一つの市場にするためには、複数の通貨があり、取引の度に両替しているのではあまりに非効率です。
そこで、皆が同じ通貨を使うことによって、国境を意識することのないビジネスができることを目的にし、ユーロが誕生しました。

イギリスがユーロ不参加の理由

最近、ブレグジットで大もめにもめているイギリスですが、イギリスは独自の通貨、ポンドを今でも使い続けています。
EUの主要国である(もうすぐ「だった」になりますが)イギリスがなぜユーロへの参加を見送ったのでしょうか。

ユーロに参加するということは、金融政策の主導権を放棄することになります。
金融政策とは、通貨量の調整量を調整したり、通貨レートが安定するように公開市場操作する政策です。
普通の国は、中央銀行がその政策を実行します。日本の場合は日本銀行が担っている機能です。

ユーロの金融政策は、欧州中央銀行が決定します。
欧州中央銀行の役員は、慣例的に有力加盟国の中央銀行出身者が就くことになっています。
当たり前の話ですが、1カ国の考えだけで金融政策を決めることができず、欧州中央銀行の金融政策は、必ずしも自国に有利なものになるとは限らないということです。

イギリスは金融の国です。
元々ポンドという強い通貨を持っているにも関わらず、コントロールが十分にできないユーロを導入すると、金融立国としての地位も危うくなる可能性があったわけです。
政治的な動きも色々あったとは思いますが、経済合理性で考えれば、イギリスがユーロを導入するメリットはあまりなかったのでユーロに参加しなかったと考えることができます。

ユーロ最大の受益者はドイツ?

反対にユーロ参加によって、メリットを大いに享受している国はドイツです。

輸出が強い国にとって、自国通貨は安くなることが望ましくなります。
日本であれば、円安の状況は輸出産業にプラスに働きます。
通貨の価値決定には、その国の経済がどのくらい強いかということが重要なファクターになります。信用といってもいいでしょう。
もちろん金融政策や他の要因によってそうならないこともありますが(民主党政権下の超円高等)原則的には、その国に対する信用の大きさで価値が決まります。

ユーロの場合はどうでしょう。
ユーロに対する信用の大きさは、どこか1カ国を見るのではなく、参加国全ての信用を見なければなりません。
イタリアやギリシャは財政破綻の危機に瀕しています。スペインも危機的状況と言われています。
一方でドイツは絶好調です。
財政も健全ですし、経済もおしなべて好調を維持しています。
すると「ドイツはいいんだけど、まずい国もあるなぁ」ということになり、それほど信用が高くならない、つまりユーロ高にはなりにくいということになります。

ドイツがもし、ユーロに不参加でマルクを使い続けていれば、マルクのレートはもっと高くなっていたと思われます。
輸出産業に悪影響が出るのは自明の理です。

なんとなく、優等生のドイツが出来の悪い他国に足を引っ張られているという風に見られがちなのです。
しかし実態は劣等生がいるからこそ、ユーロ高にならず、ドイツは有利な為替レートでビジネスが出来ているということになるわけです。

ギリシャの財政破綻がクローズアップされましたが、その時にギリシャの首相がユーロ離脱(自国通貨ドラクマの復活)をほのめかしたことがありました。
これはドイツにとってはいいことではありません。
もし、劣等生がユーロから出て行ってしまっては、ユーロ高になってしまうからです。

経済的に弱い国は、ユーロのメリットをドイツがほとんど享受しているではないかという怨嗟にも近い感情があるということです。
ブレグジットをきっかけに、EU離脱、ユーロ離脱の動きが加速するのではないかという観測もありますが、その背景には「ドイツ一人勝ち」という状況があるのです。
「欧州は一つ」という理想から始まったEU・ユーロですが、今年は大きな曲がり角の年になりそうですね。

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