永遠の旅人

言葉

永遠の旅人とは

永遠の旅人(パーマネント・トラベラー)と聞くと、何かロマンチックな雰囲気のある言葉ですが、これは税金にまつわる話です。


各国の税務当局は、課税対象者の基準を持っており、それに該当する人に課税をする仕組みです。
これは、納税者が複数の国で課税されるのを避ける意味合いがあります。

例えば、183日ルールというものがあります。
年の過半数をその国で過ごした人を課税対象者とするルールです。
逆に言えば、このルールのある国で182日以下の滞在であれば、その国に税金を納める必要はなくなります。

183日ルールを採用している3カ国(X国・Y国・Z国)で仕事をしているAさんがいます。ある年に
X国→145日
Y国→120日
Z国→100日
滞在したとします。
そうすると、何が起こるでしょうか。
X国・Y国・Z国各国の税務当局は、183日ルールに基づいてAさんが課税対象者かどうかを判定します。
すると、各国の税務当局はAさんは非課税対象者であると判断する訳です。
Aさんは税金の支払いを免れることができます。
(実際は各国が永遠の旅人対策を講じているので、こんなに単純にはいきませんが)

このように、税務当局のルールを逆手にとって、合法的に課税を免れる目的で世界各地を転々とする人のことを「永遠の旅人」と呼んでいます。
合法的なので、脱税ではないのですが、まともに税金を払っている人達からみれば「こんなことが許されていいのか!」ってなりますよね

ちなみにこの手法はパナマ文書流出事件で広く知られるようになりました。
ちょっと前までは、一部のビジネスエリートしか知らない手法だったのです。

日本の場合は

日本の場合は「居住者ルール」を採用しています。
所得税に関しては、実質的に日本に居住している者(居住者)には納税義務があり、居住者以外の非居住者は納税義務がないとされています。
何を以て居住者/非居住者を判断しているかというと、国税庁のサイトには以下のような説明文があります。

複数の滞在地がある人

ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになります。

(注) 滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。
 1年の間に居住地を数か国にわたって転々と移動する、いわゆる「永遠の旅人(Perpetual Traveler, Permanent Traveler)」の場合であっても、その人の生活の本拠がわが国にあれば、わが国の居住者となります。

ということで、単純な居住日数だけでは判断しないことになっています。
でも、逆に言えば生活の本拠が無い状態を作り出せば、非居住者となり日本で税金を払う必要は無くなります。

ここから先は運用次第なので、なんとも言えませんが、例えば外国人が日本で敢えてホテル住まいをして、家族が海外で暮らしている。年の過半数は海外で過ごしている。でも、実質的には日本で稼いでいる、なんて状況になれば、非居住者と判定されるかも知れません。

ネットがこれほど発達した世の中だと、必ずしもそこにいなくても仕事はできます。
たまに会社に来て、高額報酬をもらって、残りの期間は海外でのんびりと・・・
そんな人が優遇される税制は、おかしいですよね。
グローバル化の負の側面ではないでしょうか。

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