地政学

政治

地政学とは

地政学という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「沖縄は地政学的に重要な位置にある」とか「中東情勢を地政学的に見てみると・・・」のような形で、最近ではニュースで耳にする頻度も増えてきました。

地政学(Geopolitics)とは、地理的な要因が、政治・経済・軍事にどのような影響を与えるのかを研究していく学問です。
アメリカやヨーロッパでは国家戦略を考える上で基礎になる考え方の一つになっています。

例えば、日本は海に囲まれた島国です。
ですから、その地理的要因を前提とした政治・経済・軍事の仕組みになっています。
もし、日本が朝鮮半島と陸続きになっていたら、と想像してみれば分かります。
政治・経済・軍事全てが、今のままではまずいということがお分かりでしょう。
陸続きの国境があれば、モノの輸送は圧倒的に楽になります。
物流の面からみれば、自動車や列車で輸送することが可能になりますので、物流コストは今よりも下がるでしょう。
資源の調達も楽になるはずです。

しかし、人の往来は活発になるでしょうから、今のようなほぼ同一の価値観を前提に政治を進めることは困難になるでしょう。
軍事面でも、戦車や兵員の輸送が楽にできる訳ですから、これまで以上の軍事力(特に陸軍)が必要になります。
現実は海に囲まれているため、どこかの国が日本を攻めようとした場合、船で膨大な兵器や物資を運ばなければなりません。
逆に言えば、海からの上陸さえ許さなければ安全は担保されます。
それを前提に、海上自衛隊は潜水艦や護衛艦を整備しているのです。

邪教扱いされていた地政学

日本では長らく地政学の研究が疎かになっていました。
これには理由があり、戦前のドイツが地政学を積極的に研究していたという背景があります。地政学の大家でハウスホーファーという人物がいます。

生存圏理論という理論を提唱したことで有名なドイツの学者なのですが、彼の理論がナチスドイツの理論の裏付けになったと言われています。
ものすごく簡単に説明すると「ドイツが繁栄するためには、海に出る必要がある。そして、国土面積や人口を増加させることが重要である」というような理論です。
この考えに基づいて、ナチスドイツは欧州戦線を拡大していったと言われています。(この理論だとロシアに手を出したのが謎なのですが)
このような背景があったため、日本では危険な学問と見なされ、あまり真剣に地政学の研究をしてきませんでした。

しかし、今の世の中は地政学で物事を考えていくことが重要になってきています。

覇権

地政学の重要な考え方に、覇権という考え方があります。
覇権国という国が存在し、世界の秩序をその国が中心に形成するという考え方です。
現在の覇権国は言うまでも無くアメリカです。
第二次世界大戦後、アメリカが覇権を握り、現在の秩序が形成されています。
ちなみに、その前はイギリスが覇権国と見なされていました。

一つの国の覇権国があると、それに挑戦しようとする国が現れることがあります。
ソ連vsアメリカの冷戦は、まさにこれにあたります。
そうすると、覇権を争う国同士はかなり先鋭的な対立をするのが常です。
究極の国益とも言える覇権(覇権を握れば、自国のルールを押し通すことがしやすくなります)を奪われまい、奪ってやる、という争いですから当たり前と言えば当たり前です。

現在、アメリカに半ば公然と覇権国争いを挑んでいる国があります。
中華人民共和国です。
トランプ大統領になって、アメリカは中国に対してかなり厳しい態度を示すようになっています。
オバマ政権の時とは明らかに違います。
これは、アメリカが中国を覇権争いに挑んできていると明確に認定したことに他なりません。

日本では、トランプ大統領の気まぐれで中国に厳しく当たっているというような雰囲気の報道がなされていますが、実は対中国に制裁を厳しく求めているのは、共和党ではなく民主党の方です。
一旦、アメリカが中国を覇権挑戦国と認定したからには、例え大統領が替わったとしても、中国に対する厳しい態度は変わらないと思われます。

中国が妥協すれば、米中貿易戦争は下火になるという見方もあるようですが、アメリカが中国に要求している内容は、もしそれを呑んでしまったら中国共産党の支配体制が揺るぎかねないものです。
短期的には妥協が図られる可能性はありますが、アメリカは覇権挑戦国を徹底的に潰す国です。
これから長い間(中国が音を上げるまで)この動きは緩むことはないと思います。
地政学の考え方を知っておくと、このような動きも深いところまで見えてきます。

地政学の重要な考え方に、ランドパワーとシーパワーというものがあるのですが、これはまたの機会に説明します。

コメント