ポジティブリスト ネガティブリスト

言葉

ポジティブリスト/ネガティブリストとは

ポジティブリストとは、リストにあることのみを許可するという考え方
ネガティブリストとは、リストにあることを禁止するという考え方

ポジティブリスト/ネガティブリストという言葉は色んなシチュエーションで使われています。
例えば貿易規制の場合、ポジティブリストまたはネガティブリストで規制内容を定義しています。

ポジティブリストの場合は、こうなります。
A国に対する輸出に関しては、以下のものは輸出を許可する。
・海産物
・農産物
・食肉加工品

このような規制があったとしましょう。この場合は、A国に対して、リストにある3つ(海産物・農産物・食肉加工品)の輸出は許可されます。
逆に言えば、この3つ以外のものを輸出することは、一切禁止ということになります。

ネガティブリストの場合は、こんな感じになります。
B国に対する輸出に関しては、以下のものは輸出を禁止する。
・海産物
・農産物
・食肉加工品

このような規制の場合、B国に対しては、リストにある3つ(海産物・農産物・食肉加工品)は輸出禁止です。
逆に言えば、この3つ以外のものは自由に輸出できることになります。

何となく、ポジティブリスト/ネガティブリストと並べると、語感的にポジティブリストの方が良いイメージがありますが、大抵の場合は、ポジティブリストの方が規制がきつく、ネガティブリストの方が規制が緩くなるのです。

軍隊の場合

ポジティブリスト/ネガティブリストの考え方は似て非なるものです。
特に自由裁量という観点からすると、真逆になります。

軍隊の場合で考えて見ましょう。
軍隊の行動規範はネガティブリストで考えます。

例えば、
・民間人を傷つけてはならない
・捕虜は国際条約に違反する待遇をしてはならない
・非人道的な兵器を使用してはならない・・・
こんな感じです。

これは、ネガティブリストに書かれていないことは「何でもやっていい」ということを意味します。
軍隊は究極の自己完結組織です。
隊員が生き残り、作戦を遂行するためには、現場に大きな自由裁量を与える必要があります。
そうなると、ポジティブリストで規制するのではなく、禁止事項だけ並べたネガティブリストで運用しているのです。
ただ、大きな自由裁量を与えると、現場で想定していないような暴走がおきる可能性があります。
その抑止力として、問題のある行動に関しては、軍法会議を設置してそこで行動が正当なものであったかどうかを判断することになります。

日本の自衛隊の場合はどうでしょうか?
表面上、自衛隊は軍隊という扱いにはなっていません。
そのこともあり、部隊の運用はポジティブリスト的に運用されています。
「やっていいことリスト」があり、そこに書かれている以外のことはできないということになります。
これは警察と同じような考え方です。
もし警察が「治安を守るために何でもやっていい」という発想だとかなり危険です。
なので、警察は法律というポジティブリストを元に組織を運用するのです。

安保法制の整備の際に「自衛隊は駆けつけ警護できるか」といった論戦がありました。
これを運用するためには、駆けつけ警護の定義を明確にして、現場では「このシチュエーションは駆けつけ警護にあたる」ことを確認して、上に許可をとって駆けつける、といった手順を踏む必要があります。
こんなことをやっていたら、現場は迅速に動くことはできません。

極端に言えば、有事の際に分厚い「やっていいことリスト」を開いて、「あ、これはリストにあるから、大丈夫だ。反撃しろ」とか「これはリストにないからやっちゃいかん」といったことを現場でやらなければならないのが、自衛隊の現状なのです。
(映画『シン・ゴジラ』や『空母いぶき』という漫画が、その辺りをリアルに描いています)

さらにポジティブリスト運用になっているために、自衛隊には軍法会議はありません。
もし、作戦中に民間人を誤って死なせてしまった場合は、通常の法体系で裁かれることになると言われています。
つまり、業務上過失致死や殺人の罪に問われることになってしまうということです。
自衛隊の皆さんは、こんな手足を縛られた状態で任務を遂行しなきゃならないと思うと、何とかネガティブリスト運用にならないのかな、と思います。
これを変えるには、憲法が絡んでくる話になるのですが。

ビジネスの現場では

一方、ビジネスの現場で感じることは、「日本人はポジティブリスト的に物事を考える人が多いな」ということです。
経営者はともかく、管理職以下、一般社員まで「やっていいことリストにないから止めておこう」というバイアスが強く働いているなぁと感じることが多いです。
まさに自縄自縛そのものです。
「やっちゃいけないリスト以外は何をやってもいい」と考えることで、取り得る選択肢は大きく増えるのはずなのになぁと思います。

さらに悪いことに、ポジティブリストも明文化されていないケースが多く、勝手に忖度してブレーキをかけてしまう傾向もあります。
たまにネガティブリスト思考の人が何かやろうとすると、ポジティブリスト思考(正確にはポジティブリスト思考的な忖度思考)の人に潰されてしまうという場面を何度も見てきました。
「コンプライアンス的に・・・・」というのは、ネガティブリスト思考を潰す常套句ですね。
よく考えれば、法令になにも触れていない案も、この魔法の一言で潰されてしまいます。

中国のやり方がいいとは思いませんが、彼らのネガティブリスト思考は見習う点が多いのも事実です。
「上に規制あれば、下に対策あり」
というのは、中国の社会を皮肉った言葉として有名です。
「法律があるなら、それ以外のことはやってもOK」という考え方は逞しくもあります。

ビジネスは自由が原則です。
ネガティブリストにないことは、何をやってもいいはずです。
まず、自由に考えて、そこから現実解にもっていく。
この思考の流れができるだけで、かなりビジネスの成果は違ってくると思います。
日本人はナチュラルに考えると、ポジティブリスト的思考になる傾向があるのは間違いないでしょう。
たまにポジティブリスト的思考に凝り固まっていないか、顧みることが必要だと思います。

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