産業

酒の製法、2大分類

日頃から身近にあるお酒ですが、どうやって作られているかご存じでしょうか?
お酒が好きな人でも、以外に知らなかったりします。

お酒の製法は大きく分けると3つに分類されます。

醸造酒

材料に酵母を加えて発酵させることによって、アルコールを発生させたもの。
発酵した原液をそのまま製品にする。
アルコール分は低めのものが多い。

ビール(大麦)・日本酒(米)・ワイン(ブドウ)などが代表的

蒸留酒

材料に酵母を加えて、アルコール発酵させるところまでは一緒だが、その後に上流工程があるのが大きな違い。
蒸留により、アルコール分の高い原酒ができるが、製品にする時には適当なアルコール分になるように加水して調整する。

焼酎・ウイスキー・ブランデーなどが代表的

混成酒

醸造酒・蒸留酒を原料として、そこに果実や薬草、ハーブなどをつけ込んだり、その成分を配合したりするもの。

みりん(醸造酒)・梅酒(蒸留酒)・シェリー酒などが代表的

 

歴史的に見ても、製法的に見ても、お酒の基本は醸造酒にあります。
原料の中に酵母(アルコール発酵してくれる微生物)を入れ、アルコール醸造していきます。
出来上がったものを、そのまま製品にすると醸造酒と呼ばれるものになりますし、これをさらに蒸留すると蒸留酒になります。
醸造酒なり蒸留酒なりに、混ぜ物をしていくと、混成酒になります。

つまり、どのお酒も遡っていくと、醸造酒に辿り着くということになります。

 

醸造酒

代表格として、日本酒やワインが挙げられる醸造酒ですが、蒸留酒に比べると工程が簡略化されている分、作るのが簡単そうに思われがちです。
現実は作るのはかなり難しいです。
正確に言うと「美味しいお酒を造る」のが難しい、「品質が一定のお酒を造る」のが難しいと言った方がいいかも知れません。

素人が自宅で醸造酒を造ることは簡単です。原料に酵母を加えて放っておけばいいのですから。蒸留酒を造ろうと思えば、蒸留する装置を自作しなければならないので、ハードルはあがります。
でも、これでは美味しいお酒は、一定の品質のお酒を造ることはほぼ不可能でしょう。
(ちなみに個人が勝手にお酒を造ると、酒税法違反になりますので、ご注意を!)

醸造酒は、後工程がないので、素材を発酵させた液体がそのまま商品になります。
原料のバラツキがあれば、それは味のバラツキに直結しますし、発酵の条件(気温・湿度・材料の糖度等々)が異なれば、これも味のバラツキに直結します。

醸造酒を造るためには、職人の方(日本酒では杜氏といいます)の技術で、美味しいお酒になるように、微調整を重ねて丁寧に醸造する必要があるのです。
大手酒造メーカーでは機械化、自動化もある程度進んでいるようではありますが、美味しいと言われているお酒は、人手をかけて、材料のバラツキや微生物の作用を調整しながら、品質を高め、均一になるようにしているのです。

「今年はワインの当たり年」とか「今年の日本酒はイマイチ」という言葉はよく聞くと思いますが、「焼酎(蒸留酒)の当たり年」という言葉は聞きませんよね。
どれだけプロが管理しても、醸造酒にはバラツキがでてしまう、デリケートなものなのです。

蒸留酒

先ほども説明した通り、醸造したお酒を蒸留工程を通すことで蒸留酒になります。
蒸留してできたお酒は「原酒」と呼ばれ、焼酎の原酒の場合はアルコール度数は35度〜45度くらいになります。

蒸留したとは言え、原料の香りは残ります。
なので、同じ焼酎でも、米を原料にした米焼酎とさつま芋を原料にした芋焼酎では、全然風味が違ってきます。

通常は、原酒を薄めて、アルコール度数を調整して製品にしています。焼酎の場合は25度のものが主流です。
よく「泡盛はきついお酒」という風に思われている方がいますが、ほとんどの製品は普通の焼酎と変わらない度数で売っているので、完全な誤解です。(例外的に花酒というほぼ原酒のまま売っている泡盛があります。ものによっては60度あります。けど、あくまでも例外です)

一方、ウィスキーなどはほとんど薄めずに製品化しています。なので、アルコール度数が43度くらいになっている製品が多いです。

蒸留酒は、そのまま製品にする場合もあれば、樽などにつめて長時間熟成させる場合もあります。
ウィスキーは、樽に原酒を入れ寝かせる工程があります。10年以上熟成させたものはとても人気ですね。
山崎の18年ものなど、品薄でネットでえらい高値がついています。(ちょっと調べてみたら、50万円ほどのお値段がついていました・・・)

ちなみにウイスキーは樽に使う木の種類と、内側の処理の仕方(バーナーでよく焼くとスモーキーな香りのウイスキーになります)で大きく風味が変わります。

ちなみに蒸留酒は、糖質が入っていません。
醸造酒の場合は、アルコール発酵に必ず糖質が必要になるので、アルコール発酵しなかった糖質がお酒に残ります。
でも蒸留酒は原酒を蒸留しますので、この段階でアルコール分だけがきれいに抽出され、糖分は入ってこないのです。
ちなみにビールに多く含まれるプリン体も、ごくわずかな量しか含まれていません。
なので、「体に気をつかっている人には蒸留酒がいい」という理屈が成り立つのですが、ワインに含まれるポリフェノールのような有益な成分も取り除かれていることと、蒸留酒の方がアルコール摂取量が多くなりがちなことがあるので、「体にいい」とはなかなか言いづらいですね。

お酒と文化

かつてお酒は超がつく贅沢品でした。
考えてもみて下さい。お酒の原料に使われるものは、米やトウモロコシなどそのまま食料として食べられるものがほとんどです。
食うや食わずの状況で、お酒を造るというのは、飢え死にを加速させるようなものです。
あくまでも余った食料をお酒に回すということですから、昔はそれほど量も作れなかったことでしょう。

よく地方の方に行くと、いまでもお酒にまつわる作法が残っているところがあります。
私が体験した中では、沖縄の宮古地方に残る「おとーり」が一番印象に残っています。
皆が車座になって座り、順番に泡盛を一気飲みしていくというものです。
それが(本当に文字通り)延々と続きます・・・
正直、参加している最中は地獄の風習だと思いましたが、となりのおっちゃんに話を聞いてみると、
「この風習は、みんなが平等に酒を飲めるようにはじまったものなんだ」
ということでした。
なるほど、と思いました。

沖縄に限らず、お酒にまつわる風習が残っているところがありますが、調べてみるとお酒が貴重品だった時代の名残ということが分かります。

つまみにしても、
「現地のつまみがこうだから、この酒」
になったのか、
「現地の酒がこうだから、このつまみ」
になったのかは分かりませんが、酒と食文化はとても密接に絡んでいるなぁと思うことも多々あります。

ロシアに行った際に、トナカイ(だと思います。酔っ払っていたので・・・)の脂身の塩漬けなるモノを食べさせられました。
これが、ウォッカととても合って美味しかったのを覚えています。
これまで食べたものの中でダントツに脂っこい代物でしたが、ウォッカで流し込むと、良い塩梅になるから不思議なものです。

世界中にいろんな酒がありますが、文化という切り口で見てみると、色々なものが見えてきて面白いですよ。

コメント